2016年12月23日金曜日

今日のワイン:Jean-Marc Brignot "Cuvée Marc" 2005

今日のワイン…というか、ドメーヌ・デ・ミロワールでの収穫中に飲んだワイン。

ドメーヌ・デ・ミロワールでは、収穫期間中、夜の食事と共にワインのテイスティングがよく行われるのですが、これがブラインドで…なかなか難しい!!
本格的で、グラスも黒。色当てから始まります。あるときなど、白だったのを、全員「赤」って言っちゃったり!(マセレーションだったから仕方ない?)。
いやあ〜、私なんか、普段「美味しい♡」とか「あんまり好きじゃない☆」とか言って飲んでるだけなんだなあーと思い知らせれましたよ…。

で、色々と飲んだ中で、特に印象に残っているのがこちら。
ジャン=マルク・ブリニョの「キュヴェ・マルク」2005年。
手伝いに来ていたフランス人が自分の秘蔵カーヴから持ってきてくれたもの。

ブライドでテイスティングを始めた時点で、「若い!」っていう感じ。まだ炭酸が残っていて(舌の上でプチプチはじける感じ)、何より揮発酸、アセテート(よく「マニュキュアのにおい」と言われるにおい)!!
…って、通常だったら「欠点」ですよねえ〜。ナチュラル・ワイン好きだと慣れっこなんだけど。SO2などの安定剤を施してない証拠でもあるから。でもこういうの、慣れちゃいけないのかなあ、本当は。

とにかく、その造りの率直さから、ワインの向こうの造り手さんに親しみを感じてしまったのです。
なんだか明るく優しく笑ってるような気がしました。
誰か知ってる人っぽいなあ…。

南?
結構タンニンあるし。
ラングドック地方とか、こういう造りの人、多いし。
でも酸がしっかりしてるなあ。

…で、出した答えは……忘れてしまいましたが…
「ラングドックのシラー」とか言ったかも??

どっこい、ジュラ地方、アルボワでした!
ガメイかな?
詳しいことはわからず。
キュヴェ名の由来然り。
(誰か佐渡に行ったらきいてきて〜。)

「乱暴なつくり方と感じる」という意見も出たけれど、私は「やっぱり天才肌だなあ」と改めて感心しました。(「天才」ではなく、あくまで「天才肌」ね。)頭をひねりにひねって悩んでこじれる段階を「えいやっ」っと無邪気に一足飛びに超えて、そしてそれで美味しいワインを造ってしまえるんだなあという感じ。まあ、本当はすごく悩みながら造られたのかもしれませんが…。

しかし10年以上経ってのこの揮発酸。リリース当時はどうだったのだろう?それこそすごかったのではないか??…と、色々と興味のつきないワインでした。

ところで、このワインを持ってきてくれた人は、昨年の収穫のときに私とこの造り手さんの話をしたことを思い出し、今回これを選んでくれたのだとか。収穫に行く日なんて打ち合わせてなかったのに同じ時期に一緒になれて、このワインも飲ませてもらえて…偶然って素晴らしいーーー!ありがとう!!!
…というわけで思い出深いワインです。

2016年12月15日木曜日

ジュラで収穫:Domaine des Miroires

だいぶ前の話になってしまいますが…
10月前半、収穫のお手伝いにジュラにも行ってきました。

実は昨年もお世話になったドメーヌ・デ・ミロワール。
日本人の鏡さんご夫妻がやっているドメーヌです。

昨年は暑さで収穫が思ったよりも前倒しになり、私は収穫初め頃の9月半ばにお邪魔しました。
今年もそんな気分でいたら…
いや、例年通りだったんですねー…。
ということで、こちらの勝手な思惑とズレてしまいました。
でもボジョレにも行ってたので、逆に重ならなくて良かった!
連絡を取りつつ調整し(というか、こちらのプライベートなスケジュールを了承してもらった)、収穫時期最後の方の10月初旬から半ばにかけての約一週間、受け入れて頂きました。

私が到着した日、気持ちよく晴れていて「この青空の下で収穫するのは気持ち良いだろうなー!!」と勇んで行ったら…蔵の中でマールの除梗をする日でした。
マールとは、ぶどうを絞った後の残りのことです。また、除梗とは、ぶどうの房の梗の部分を取り除くこと。
鏡さんのドメーヌでは、ぶどうをプレスした後、マールを除梗して保管し、年末に蒸留酒にしています。
マールの蒸留酒はアルコール度が高いので好き嫌いが別れるかもしれません。他のドメーヌのものを飲んだことがありますが、私は焼酎っぽくて好きです(異論は受け付けます)。個人的にはクリスマス・プディング(フランスであなくイギリスのものですが)と一緒に飲むとすごく合う!…と思っています。

で、マールの除梗に取りかかること数分、いきなり「さあ、おやつの時間ですよ〜!!!」
「???」と思っていたら…
プレスした後にでてくるムース!まさにおやつ。
自然の甘みがあってふんわりしてて、すくって舐める手が止まらない〜。

しかしオイシイお仕事ばっかりではありません。
翌朝、収穫に出かけてみたら、霧!!
さむっ!!
まだ10月初旬なのに、朝の気温は2度…。
畑の中でも先が見えないし!

収穫するぶどうが冷たい…。
そして、ぶどうの葉っぱに露がついて、手が濡れると余計に冷たい。
畑は北西に向いた斜面にあるので、なかなか日が射さない…。
っていうか、太陽が雲に隠れて、顔を出しそうで出さず…。
そして谷間のようになっている畑周辺は霧がなかなか晴れない…。

でも、低い温度のおかげで、熟したぶどうが保存されているわけですね。
少人数、それも私のような素人は収穫に時間がかかるので、これは「天候に恵まれた」というべきなのかな。

余談ですが、この日は週末だったため、狩猟をしている人たちがいたようです。狩猟犬の吠える声や、犬を呼ぶラッパの音が霧の中に響いて、なんかこういうのってすごくヨーロッパぽいなあ(「キャンディ・キャンディ」でアンソニーが落馬して死んだのはこんな日だったのかなぁーとか)…なんて頭の片隅で考えたり。
…と、犬の声が近づいてきたなと思ったら、畑のすぐそばに。
走ってきて、ぐるぐる回って、去っていった…。
そして、きかんぼうらしきこの犬ちゃん達は、ご主人の呼び戻しラッパを一向に介せず、なかなか帰らず、ご主人が手を焼いていたようでした。

畑の周辺で狩猟をしているというのも、すぐ上が森で、鹿が出るのです。
鏡さんの畑のぶどうも、鹿や鳥に食べられてしまうという被害にあっています。ネットを張り、ラジオを鳴らしっぱなしにしたり、時々爆竹を鳴らしたり…と色々な対策をとっていますが、完全に予防するのはなかなか難しいようです。

午前中は霧で凍えましたが、一日の収穫を終える頃には美しい夕焼け。
夕陽を浴びるシャルドネがきれいで見とれてしまったー。

今年は春から夏にかけて雨が多かったため、ベト病が流行ったそうですが、鏡さんのところは対応が迅速・適切だったようで、被害はかなり抑えられたみたいです。
それでも病気で実が乾燥してしまってカリカリな状態になっている房もあり、そういった部分は取り除いて収穫しながらも、上の写真のようにきれいな房ばかりの樹にあたるとすごく嬉しい。

収穫の合間に、そういった病気の話や畑の話などを聞かせていただけて勉強になります。単なる好奇心からの質問でも、いつも丁寧に真摯に答えてくださって、有り難いのと同時に、「やっぱり芯からワイン造りに取り組んでいる方なんだなあ」と感じます。
耕した畝。
色々な耕し方(馬、ウィンチなどを使う方法)
についても解説いただきました。
耕された土はモコモコ!
ぶどうだけではなく、他の植物や虫もここに生きているのを実感。

ちなみに、極力自然と共生する畑。
虫はもちろんですが、蛙がいたときにはさすがにびっくり!
野いちご(もう季節ではないので葉っぱだけ)を発見したり、畑の間に生える若々しい緑のたんぽぽの葉など、つい「美味しそう〜」と思ってしまったり。実際、畑の野草を摘んでお料理されることもあるとか。
手伝いに来ていたフランス人は、帰る前に畑の間できのこ狩りをしてました。

さて別の日、さらに気温が下がって、霜が…!
この寒さを予想していなかったため、着るものなどの準備がいまいちだった私。体調への打撃が内心不安だったのですが、意外と平気だったー!

と、寒さばかりを強調している感じになってしまいましたが、鏡さんのところの収穫は、個人的には実に楽しいのです。ご夫妻とは同世代なので、懐かしの音楽や映画の話、芸能ニュース、フランス生活のエピソード、共通の知人の近況などなど…話題が尽きず、ついついおしゃべりが弾んでしまいます。(手は動かしてます!!)
そして日本から来ている若い世代の方々と出会える幸運。
朝から夜遅くまでやることはいっぱいあって、特に男性は力仕事もあって大変ですが、お互いに冗談を言いながらの、笑い声の絶えない収穫です。

そんな感じで、摘んで食べて飲んで除梗して食べて飲んで…若者たちに気を使っていただき、助けられてラクさせてもらいつつ、いよいよ最終日!
「もうすぐ終わるぞー!」という笑顔
最後に摘んだのはサヴァニヤン

そして収穫終了ーーー!!
最後のぶどうを車に積んで、クラクションを鳴らしながら蔵まで帰ります。
この地域では、収穫を終えた車に花を飾り、クラクションを鳴らしながらぶどうを運ぶのが習慣なのだとか。
しかし、平日の昼間…この小さな村に人がいない!
結局、道すがら手(というか尻尾)をふってくれたのは犬が一匹だけ……
と、思ったらその飼い主さんもいて、ちょっと救われた気分。

しかし、収穫が終わっても、まだプレスとマールの除梗(と、その他諸々の仕事)が待っています。
スケジュール的に私はここまでしかお手伝いできませんでしたが、収穫の最後までいられたのは嬉しかったです。

ボジョレに行ったときに、マックスの話から、生産者さんたちが収穫期間中すごく神経を集中させているということを改めて感じましたが、鏡さんも同じでした。収穫だけでなく、ぶどうをプレスしたり、タンクから樽へ果汁を移したりと、同時進行の作業がいくつもあり、そのひとつひとつに気を配り、ミスのないように細心の注意を払い、でもやっぱり予想外のアクシデントが起こったり…心身ともにエネルギーの要る肝心な時期。「寝る間も惜しんで」とはまさにこのこと。
こんなに大事に造っているワインは、やっぱり大事に飲みたいなあ。 
私のような鈍くさい素人では技術的にはお手伝いできる範囲は限られているけれど、せめて足を引っ張らないように頑張りますー、できれば来年も!
中腹に見えるのが
ドメーヌ・デ・ミロワールの畑