2013年10月31日木曜日

今日のワイン : Sébastien Riffault "Auksinis" (macération) 2010

サヴォワのジャン=イヴ・ペロンのところで、夜ご飯の食卓でブラインド・テイスティングしたときに、私はなんとなくハッとひらめいて(ちょっとカンニング的なヒントもあったのだけど)「セバスチャン・リフォー!」と言ってしまったのが、アレクサンドル・バンのピュイイ・フュメ「Pierre Précieuse(ピエール・プレシューズ)」2010年だったのですが、そんなことを思い出してなんだかセバスチャン・リフォーが飲みたくなってしまい、奮発して買ってみました。ブルターニュへ行ってしまって不在の夫には内緒w
セバスチャン・リフォー「オクシニス」2010年。

このキュヴェと「Skeveldra(スケヴェルドラ)」は古いヴィンテージしか出さない店主が2010年という比較的新しいのを棚に並べていたので「?」「今、美味しいのかな?」とちょっと疑問に思っていたのですが、品出ししていた時にこれが特別らしいことに気づきました。ラベルの角に「MACERATION(マセラシオン)」とプリントされているのです。
フランスの白ワインは、通常、ブドウをプレスして果汁を取り出してからワイン造りを始めますが、最近は、古いイタリア式を真似て、果皮と一緒漬け込んで(マセラシオン=マセレーション)造る人が増えています。これも、どうやらマセレーションしたものらしい。ジャン=イヴ・ペロンもマセレーションの白を作っていて、そのことも思い出しながら「マセレーションの白が飲みたいな」という気持ちもあったので、それと「セバスチャン・リフォーのワイン」という二つの要素でこれに決めました。

透かしてみると、澱がいっぱい。ワインの旨味がいっぱい入っていそうです。

抜栓して、ブショネではないかどうかの確認のためにコルクをかいでみると…!!すごーーーく良い香り!マーマレードみたいな、柑橘系の香り。注ぐ前にしばらくうっとりとコルクをかぎ続けてしまいましたw

グラスに注いでみると、ココナッツやマンゴーといった南国フルーツを思わせる香りがみっちり。柑橘系フルーツの香りもあります。
口に含むと、アルコール度の高いまるみとテクスチュアが濃い感じ、香りが豊かで、でも酸味がちゃんとワインを支えています。そして、SO2は添加していないなというダイレクトさ。

ジャン=イヴのうちでテイスティングしたとき、もしあれがこのワインだったら、逆に「アレクサンドル・バンの『ピュイイ・フュメ』2009年!」と言ってしまっていたかもしれないなあ〜…なんて思ってしまいました。まあ、だいぶ違うところがあるけどね、本当は。

(ちなみに、アレクサンドル・バンとセバスチャン・リフォーはロワール川を挟んでほぼ隣同士。距離にして5、6kmでしょうか?)

うーん、でも、アルコール度が高いせいか、疲れていたせいか、なんだか酔いがまわるのが早かった。それに、時間が経ったらまた変化しそうな気がしたので、半分以上を翌日に残して冷蔵庫へ。

翌日は、酸化して色がだいぶ濃くなっていて、ちょっとびっくり。

前日よりももっとソーヴィニヨンらしい香りが感じられて、でも、私の好きではない「猫のオシッコ系」はほんの少しだけ。むしろ、アレクサンドル・バンのソーヴィニヨンと同じような空豆みたいな香り。それに酸化の香りが加わって、前日の派手なフルーツ系とはだいぶ違います。
味わいも、酸化の要素が加わって、またちょっと違いました。でもやっぱりアルコール度の高さが感じられます。酔っぱらってしまう〜。

今度はミネラリティのある「スケヴェルドラ」(本当はどちらかというとそっちの方が好き)が飲みたいな。

2013年10月30日水曜日

サヴォワでブドウ収穫

6月の試飲会でサヴォワのワイン生産者、ジャン=イヴ・ペロンに会った時に、「ブドウの収穫の手伝いをしたい」という話をちらっとしていたので、夏のヴァカンスから戻って連絡してみたら快くOKしてくれ、収穫時期のまっただ中に訪問してきました。10月16日から21日まで、全部で6日間の滞在でした。

ワインの仕事に関わる以前から、ブドウ摘みに参加してみたいと思っていたのですが、実はこれが初めての体験です。

パリからアヌシー行きTGVに乗り、3時間40分かけてサヴォワ地方へ。


サヴォワ地方のワインはマイナーで、全体生産量も少なく、大部分は地元民やスキー客など、その地域で消費されるようです。たしかに、あまり有名ではなくて、うちのお店でサヴォワのワインが欲しいと言われるのは、ラクレット(チーズを加熱してトロトロに溶かし、茹でジャガイモにかけ、ハムや乾燥ソーセージと一緒に食べる、サヴォワ地方の料理)に合わせたいからという時ぐらいで、あまり聞かれることもありません。
品種も、他の地域では見られないローカル種が主で、例えば赤ならモンドゥーズ、白ならジャケール、アルテスといった品種があります。その他、ピノ・ノワール、ガメイ、ルッサンヌ(地元名はベルジュロン)といった比較的一般に知られている品種も栽培されています。

初めての収穫で、何故そんなマイナー地域に行ったのか?…後から考えると自分でもちょっと不思議な感じがしないでもないのですが、地方やアペラシオン(原産地統制呼称)云々よりも、美味しいワインを造る生産者、自分の好きなワインを造る生産者のところに行ってみたかったのです。

収穫に行ったことのある友人には「背中が痛くなった」「ハサミで指を切って血が吹き出た」などという話を聞いていたので、多少不安を抱きながらの参加。

到着当日は、醸造所で前週に収穫したモンドゥーズをロゼ(「ヴェール・ラ・メゾン・ルージュ」…って、赤だと思っていたけれどロゼなのだそうです)用にプレスしているところを見学させてもらいました。
夜は(といっても日が暮れるのが早いので、本当は6時くらい)キッチンのお手伝い。ジャン=イヴの親戚の女の子が食事の用意を担当していて、彼女やドイツ人研修生とおしゃべりしながら一緒にお料理のお手伝いをして、緊張がほぐれました。早目に就寝して、翌日の午前中は醸造所で仕事。

私が醸造所に下りた時には、木製の旧型プレス機はすでに解体されていました。
前日にプレスした残り(果帽)を崩して容器に入れます。

果帽は圧搾されているので、かなり凝縮されていて重いです。
これを隣人が引き取り、発酵させてワインとは別のアルコールを造るらしい。
果帽を全部集め終わったら、プレス機をきれいに洗って、午後からいよいよ収穫。

車に乗って1時間ほど移動し、シニャン近くの畑へ。他の人が栽培している畑で、いわゆるネゴス(他の人からブドウを買ってワインを造る)用の収穫です。品種は白のジャケール。
ジャン=イヴが「これより平らな畑はない」と言うほどの平地で、丘の斜面でのキツイ収穫を勝手に覚悟していた私はちょっぴり拍子抜け。でも南向きで、周りも畑なので、日当たりは抜群。
初めてのことなので、カビがついているものは取り除いた方が良いのか?など、迷いながらやっていたら、他の人から相当に遅れをとってしまいました。実はこのカビ、「pourriture noble(プリチュール・ノーブル)」と呼ばれる貴腐ブドウでした。取り除かなくてよかったのね…。
今年は悪性のカビが少なく、ブドウの質が良いとのこと。ただ、量は昨年に比べて減ったみたい。質・量の両方がかなうということは、なかなか難しいようです。

一区画の収穫を終え、醸造所に戻り、発酵槽へブドウを入れ、収穫用のカゴを洗って終了。収穫は助っ人さんが数人いたのですが、醸造所へ戻ってからは私を含めて4人だけ。荷台から醸造所の中へブドウを運ぶのが二人、それを受け取って発酵槽へ入れるのが二人。私は前者としてお手伝いしましたが、思ったよりも重くて(後から聞いたところによると、カゴひとつ約25キロだそう)、途中、へこみそうになりました。でも晴天の夜空に輝く満月に元気をもらって頑張りました。

翌日は、ジャン=イヴの畑での収穫。
前日の畑に比べ、ブドウの木の仕立てがずっと整っていて、雑草の手入れもされていて、きれいな畑でした。でも、網を張って予防していても、周辺の森に住む鳥や小動物に食べられてしまうとこのことで、収穫はだいぶ減ってしまいました。

貴腐のところに蜂が集まってきます。
そこがとても甘くて美味しい証拠。
お昼休憩にみんなに飲ませてくれた
La petite robe 2011(ラ・プティット・ローブ 2011年)。
前日のネゴス用の畑のブドウからできています。
赤品種モンドゥーズ。
きれいでいっぱい実のついた房を収穫するとき、
なんだか幸せ。

各区画が小さいので、この日は早めに終わりました。途中でお昼ごはんの休憩をとりつつ全部で五区画を収穫、午前8時半頃に始まって午後2時頃に終了。
醸造所に戻ってブドウを発酵槽に入れ終わって一息ついていたら、週末助っ人が到着。普段はブルゴーニュのドメーヌで働いている、フランス人の若い男の子と日本人の女性。別に申し合わせたわけではないのに、同じ時期にこの小さな醸造所に日本人が二人も!個人的にはとても嬉しい。
実はジャン=イヴのところには、以前から日本人の研修生がたくさん来ているようです。ジャン=イヴも奥さんも、面倒見が良くて親切で色々な人を受け入れてくれるから、外国人でも安心して学びに来ることができるのでしょう。
さて、男手が増えたので、あまりやることがなく、女性同士でおしゃべりしながら見学。でも、やっぱり私たちは日本人、他人が働いているのを手伝わずにぼーっと見ているだけというのは、なんとなく居心地悪い。でもおしゃべりは楽しい…(なんのこっちゃ)。
夜は、ご飯を食べながらワインのテイスティング。ジャン=イヴのテイスティングはいつもブラインドです。品種、地方、ヴィンテージ、生産者名などを当てさせられます。私はハズしてばっかりでした…。でも、こうしてブラインドで飲むと、率直に好きか嫌いかが感じられて面白かったです。(一般的に美味しいと評価できるかということはまた別問題だと思いますが。)

土曜日は、更に助っ人が増え、なかなかの大人数でジャン=イヴの畑での収穫。私が参加した初日からお天気に恵まれ、この日も雲の少ない晴天となり、高地で斜面にある日当りの良い畑で汗だく。
これよりも傾斜が急な畑があり、
カゴがブドウでいっぱいになると運ぶのが大変。

散らばった区画の間の移動途中に出会ったロバさんに挨拶。
かわいい〜!

お昼ごはんは、畑の間の野原でピクニック。ジャン=イヴが彼のワインをマグナムボトルで持ってきて振る舞ってくれました。楽しい、美味しい!
意外にブドウが少なかったようで、予想よりも収穫は早く終わり、少し余裕のある一日でした。私たちにとってはその分ラクだったけれど、ジャン=イヴにとっては生産量が厳しいヴィンテージになりそう。

日曜日、午前中は曇りのち雨。ネゴス用のブドウ収穫です。今までとは反対に、思ったよりもブドウの量が多く、カゴが足りなくなって、収穫しきれないまま不完全燃焼な気分で終了。
嵐で不思議に美しい光の空とブドウ畑。
醸造所に帰った頃には雷の音まで聞こえてきて、ちょっと不安な空模様。でも山のお天気だから変わりやすい?午後は晴れ間が見えました。
お昼ごはんに、またワインのブラインド・テイスティング…で、私はまたまた思いっきりハズしました…。十分美味しいと思ったけれど、ジャン=イヴにとっては「やっぱり嵐の日はイマイチ」だったそう。「それでも美味しい」と付け加えてはいたけれど。天候のせいでワインの味が万全ではないとわかっていても、やっぱりこれが飲みたかったのだそうです。
Dard et Ribo "Saint-Joseph" 2005
若々しく感じられるほどのフルーティさとシラー種のきれいな酸。

午後は、朝収穫したブドウを発酵槽に入れたり、1週間ほど前に収穫してマセレーション(漬け込み)している発酵槽のピジャージュ(果帽を果汁に落として混ぜる作業)など、醸造所のお仕事。
ブドウがいっぱいに入った発酵槽

ピジャージュした後の別の発酵槽

月曜の朝、ブルゴーニュからの助っ人さんたちが出発し、ジャン=イヴは書類関係の仕事。私はやることがないので、ぼーっとしていました。
うらやましい猫の生活
お昼近くになって、新しい研修生が到着。扉を開けたら……なんと!うちのお店の常連の若い男の子でした!
まさかこんなところで再会するとは…。
何かの運命呪いか?

午後、醸造所で樽の土台をなおす仕事を少し手伝って、気がつけばもうそろそろ出発の時間。みんなにお別れを言って、ジャン=イヴには「souvenir(「おみやげ」というか「思い出の品」「記念品」という意味合いのあるもの)」にワインをいただき、とてもとても良い収穫体験ができました!!と、胸いっぱいでペロン家を出発。
…したものの、なんとバスが20分も遅刻。これではアヌシー駅からのTGVに間に合わない!?ということで、急遽、ジャン=イヴの奥さんが駅まで車で送ってくれました。しかし、アヌシー市街に入ったところから帰宅ラッシュなどで車の交通量が多く、「ああ、もうダメかも」と言いながらギリギリの時間に駅に到着。すでにTGVの出発アナウンスが流れていて、ホームを探しながら駅を駆け抜けました。と、ホームに着いたら電車の扉はもう閉まっている!先にホームに着いた奥さんが「待ってえ!」と叫んでくれて、ホームにいた駅員さんに「早く!」と促されながら、ひとつだけまだ開いていた扉まで3車両分くらい走り、なんとか乗ることができました…。無我夢中とはこのことか、というくらい余裕がありませんでした。本当にもう乗れないと思ったよ。
収穫の仕事はキツいと聞いていたけれど、収穫滞在中、結局一番キツかったのはこの最後の直線ダッシュでした…。

というわけで、本当に忘れがたい体験となりました。
Merci Jean-Yves!

2013年10月14日月曜日

今日ワイン : Jérôme Jouret "L'abri" 2011 & "Pas à pas" 2012

店主が夏休み中に南ローヌ地方アルデッシュ県で色々とテイスティングしてきたらしく、私がヴァカンスから戻ってきたら、お店にそこのワインがどーんと増えていました。
その中で、ワインをたくさん知っている友人インポーターさんにもオススメされたのがジェローム・ジュレ。日本でも人気があるみたい?
四種類のキュヴェがお店に入荷して、そのうち三つを店頭に出しているのですが、あっという間に売れてしまいました。(まあ、店主と私、二人ともがオススメしているから当たり前か。)

三つのうち一つが「ラブリ」2011年。

品種はカベルネ・ソーヴィニヨン100%。南ローヌでカベルネ・ソーヴィニヨンは珍しい気がします。あ、でもはカベルネ・フランはあるかな?
生産者さんがキュヴェの品種名を言うとき、よく「カベルネ」とだけ呼び、一緒くたにされている気がしていて、実際にカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンがどれだけ違うのか、よくわかりませんでした。それが、今回これを飲んで、なんとなくわかった気がします。カベルネ・フランの方がタンニンが柔らかく、カベルネ・ソーヴィニヨンはもっと力強い感じ。先日来店した別の生産者さんにも聞いてみたら、やはりカベルネ・ソーヴィニヨンの方が果皮が厚くてタンニンが多いそうです。
でもこのワインはタンニンが前面に出てこず、口当たりが軽くすーっと入ってきます。ただ、カベルネ特有の香り(ピーマンとよく言われる)が強く感じられました。
実は個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンは苦手な部類に入るので、あの独特の香りには敏感なのです。それでも、美味しく出来ているワインはやっぱり好き。まさかこんなに軽やかでさらっとしたカベルネ・ソーヴィニヨンがあるとは。南ローヌと言うと、太陽いっぱいで濃厚でアルコール度の高いワインというイメージですが、これはそういう先入観とは全く異なるワインでした。
これはリピーターさんも多くて、数日で完売。

もう一つ、グルナッシュとシラー混合のJava(ジャヴァ)というキュヴェもありましたが、ラブリと競うように完売。(飲み損なった…。)

そして店頭にまだ残っているのが「パザパ」2012年。

品種はカリニャンとアリカンテ。
こちらはヴィンテージが若いせいか?まだだいぶ閉じていて還元香(獣っぽい香り、豆を煮たような香り)がするので、少しオススメ度が落ちています。カラフに移したり、予め抜栓しておく時間の余裕のある人向けです。
私は、カラフに移してぐるぐるまわしました。それでも少しとがったようなタンニンの渋みが感じられました。3杯目くらいからだいぶほぐれ、フルーティさが前面に出てきました。…と、気づいたらもう空っぽ。なんだかんだ言ってすいすい飲んでしまっていました。(二人だったし。)
カベルネと対照的に、カリニャンは好きな品種です。小粒な赤いベリー系、タンニンは他品種より少なめで酸味もある印象。「パザパ」は、まさにそういうワインでした。

軽くて飲みやすくて、お値段も手頃(うちのお店では8,70ユーロ、現在のレートで日本円に換算すると1200円くらい)。しかもSO2無添加。本当に嬉しいワインです。
でも生産量があまりないと思うので、再入荷は無理かなあ?