2012年11月30日金曜日

ボジョレ・ヌーヴォー2012

もう12月に突入してしまいますが、11月の一大イベント、ボジョレ・ヌーヴォーのことを。

毎年、11月第3木曜日にボジョレ・ヌーヴォーが解禁になります。
ずーっと昔、ワインに興味がなかった頃、「解禁」ということは、それまで「禁じられている」わけだから、誰も飲んだことがないものだろう…と漠然と思っていましたが、プロの人たちはそのずっと前に試飲しています(ちょっと考えれば当たり前のことですが…)。うちのお店では、10月末頃に生産者さんが何人かサンプルを持ってきて、店主が試飲したようです。そのなかで今年入荷したのは二種類だけでした。去年、さんざん注文しまくってあり余ったことに懲りたのかも…?

お店に入荷したのは、今回新たにコンタクトのあったレミ・デュフェートルという生産者のものと、去年もヌーヴォーの取り扱いがあったフランス・ゴンザルヴェスという女性の生産者のもの。

実はフランス・ゴンザルヴェスの去年のヌーヴォー、お店にまだ在庫があるのです…。そこで、「良い機会」と、飲み比べてみました。
左が2011年、右が2012年。ほぼ同じラベルです。
イラストの中の飛んでる瓶に、小さくヴィンテージが記入されています。
去年の方が、少し丸みがありました。今年のは、もっと軽くてフルーティ。

ボジョレと同時に、フランス南西部ルシヨン地方の新酒も入荷しました。
フラール・ルージュ(ジャン=フランソワ・ニック)の「オクトーブル」と、ドメーヌ・レオニン(ステファン・モラン)の「ケ・パサ?」。どちらも同生産者から毎年新酒として出てくるキュヴェ。前者は、タンニンがいつもより少し強め、骨太な新酒。後者はフルーティで、マセラシオン・カーボニック特有のさわやかな香り。どちらもやっぱり若いので、カラフに移して開かせてあげると美味しいです。

さて、解禁前日の水曜の夜、またまたケヴィンのビストロ「オトゥール・ダン・ヴェール」にお邪魔して、すっかり長居をしてしまって零時が過ぎ、「じゃ、飲もうかー」と、その場にいた人たちで今年のボジョレ・ヌーヴォーを開けました。ケヴィンのところには、ラファエル・シャンピエという生産者のものもあり、みんなで3種類を飲み比べました。個人的には、フランス・ゴンザルヴェスのヌーヴォーが果実味があって少し甘みも感じ、一番良かったです。

そして、翌週の火曜、お稽古仲間(太極拳をやっています)でレッスン後にボジョレ・ヌーヴォー大会。私は先生に頼まれてフランス・ゴンザルヴェスのヌーヴォーと、乾燥ソーセージ、パテを担当。その他、それぞれがチーズやパンなどを持ち寄り、いかにも「ボジョレ」らしい楽しいひとときを過ごしました。

社交辞令かどうかわかりませんが、「このボジョレ・ヌーヴォー、おいしいね!」とみんなに言われました。

「ボジョレ・ヌーヴォーは不味い」と公言してはばからないフランス人が多いのですが、なんとなくフランス人らしいあまのじゃく的な態度でそう言っているような気もしつつ、そういう人たちは美味しいボジョレ・ヌーヴォーを求めていないのではないか…と思ってしまいます。もちろん、ひとそれぞれ好みというものがあるので一概には言えません。でも、個性の違うボジョレ・ヌーヴォーたちをひとつのカテゴリーにくくって「不味い」と一刀両断するのは了見が狭いなあ…とつい不満に思ってしまうワイン屋なのでした。

2012年11月18日日曜日

今日のワイン:Audrey et Christian Binner "Riesling, ça gazouille!!" 2009


11月の第三木曜日、ボジョレ・ヌーヴォーが解禁になりました…が、今回はその前の週に飲んだアルザスワインについて。

以前、お店で瓶詰めをするので樽を運び込んだとき、手伝ってくれた人たちに店主がお礼で一杯ふるまったワインが美味しくて、また飲みたいなと思っていたのでした。
それが、アルザス地方、ビネールという生産者のリースリング「サ・ガズイユ」2009年。

アルザスワインは一品種のみでつくるのがほとんどで、ラベルに品種名を明記するのが慣例です。(例外で、数品種をブレンドした「Edelzwiker エーデルツヴィッカー」があります。)今回のワインの「リースリング」は品種名。そして「サ・ガズイユ」という名前がついていますが、ガズイユの原形、ガズイエ(gazouiller)は「つぶやく、さえずる」という意味で、英語にすると「it tweet」みたいな感じでしょうか。でもワインについてだと「炭酸ガスがある」という意味合いで使います。
なので、かなり炭酸ガスがあるのかな?と思って開けてみましたが、ほとんど感じませんでした。

しかし!
おそろしく美味しい!!

ふくよかなぶどうそのもののジューシーさとすっきりした酸。ミネラルがあり、そしてとても香りが高い。
アルザスワインはだいたいにおいて香りが強いのが特徴ですが、リースリングはその中でもおとなしめな印象がありました。たしかにゲヴェルツトラミネールとかピノ・グリのような、ものすごく独特なアロマというわけではないのですが、これはやっぱり香りが高くて「アルザスワインってこうなんだな〜」と実感。

これで12ユーロ(当店価格)は安い!(今のレートで日本円に換算すると1200〜1300円でしょうか。)

残念ながら、お店ではどうやらこれが最後の一本だったよう。
っていうか、私は2本しか見てないんだけど…?またどっかから発掘されたものだったのかな…??

2012年11月6日火曜日

今日のワイン:Elise Brignot "Format Raisin 2ème mise" 2006

地下カーヴの拡張工事の後、店主が奥にしまいこまれていたワインのストックの整理を始め、発掘された在庫がいくつか出てきました。寝かしておいて方がよさそうなものもあったのでしょうが、もしかしたら自分や常連さんだけにとっておきたいワインもあったのかもしれません。(寝かしておいて、そのまま忘れていたものもありそうですが…。)そんな発掘ワインに好奇心を存分あおらています。
で、そのひとつがこれ。
エリーズ・ブリニョの「フォルマ・レザン」。

エリーズ・ブリニョは、初ヴィンテージのリリース直後から一部で一躍有名になりましたが、何年か前にワイン造りをやめてしまったらしい。子供ができたから…という噂ですが。

ちなみに、「フォルマ・レザン」とは、フランス式の紙の大きさ規定のひとつだそうです。夫が美術学校時代、よくフォルマ・レザンを指定されたと言っていました。美術学生にとっての典型的な大きさらしいです。

さて、品種はシュナンとシャルドネ(多分)。
栓はコルクではなく、王冠でした。王冠だと、よく「発泡ワインなの?」と聞かれますが、瓶詰めしたときに炭酸ガスが残っていたり、残糖があって再発酵する(そうすると炭酸ガスが発生する)可能性などがあると、生産者によってはコルク栓ではなく王冠にすることがあります。

「2ème mise」というのは、二回目の瓶詰めという意味。瓶詰めのタイミングによってワインも味が違ったりしますので、この辺を明記してくれているとワイン屋としてはわかりやすくてありがたいです。
といっても、このワインの初回瓶詰めの在庫はお店にないので、簡単には飲み比べられません…。残念。

グラスに注いでみると、表面のディスクと呼ばれる部分がとても厚く、見るからに濃厚そうな印象。ところが、口に含んでみると、酸が際立って、意外や重たく感じません。でもやっぱりまろやかさが後ろに控えている。後口には甘みが残りますが、ベタつく嫌味がなく、心地よい甘さ。そして余韻もとっても長い!!うーん、美味しいじゃない、これ〜!?

しかし、エリーズのお兄さん、ジャン=マルクもワインを造っていて彼のワインは大好きなのですが、きょうだい仲が悪いらしいので、エリーズのワインを賞賛するのはなんとなく後ろめたい…。まあ別に向こうは知ったことではないでしょうが…。

抜栓後、瓶をあけたままで2時間くらいおいていたら、酸素にふれて、だいぶビネガーっぽくなってしまいました。結構デリケート。まあ6年経ってますからね。でもまだ1年くらいキープしておけそう?

2012年11月4日日曜日

今日のワイン:P-U-R "Château Gonflable" 2011

ストックを置いているお店の地下カーブがちょっと広くなり、店内の段ボールも少しずつ片付いて、お客さんにも「うわっ、整頓されてるね〜、どうしたの?」と驚かれる今日この頃。(ってか、以前ってそんなに散らかってたのか…?)夏の間は入荷が少なく、売れた分だけ在庫が減ったせいもあるのでしょう。まあ、それでも段ボールだらけなんですけどね。
「やっとそれなりに店内スペースが確保できてきたなあ」と安心できるのも今のうち、そろそろ各生産者から大量に荷物が届く季節です。そして、新しいワインがくると「どんな味なのかな〜」とわくわくしてしまいます。

今日のワインも、新着の中で気になっていたもの。
P-U-Rの「シャトー・ゴンフラーブル」。
もともとボジョレで自分のブドウからワインをつくっていたシリル・アロンゾがネゴシアン(ブドウ、またはワインを他生産者から買い、瓶詰めして自分の名前で売る形態)でやっているのがP-U-R。ちなみにP-U-Rとは「Production Unique Rebelle」(「反抗的で独自的なプロダクション」とでも訳しましょうか)の略らしい。また、purという語はフランス語で「純粋な」(英語のpureに相当)という意味。
この夏、休暇先のブルターニュで飲んだP-U-Rの「ヴァン・ド・ターブル」というのをすこぶる気に入ったので、このネゴシアンのワインにちょっと興味がわいていました。
しかも、このジョークめいっぱいのラベル!

いやね、駄洒落やジョークを説明するほど野暮なことはないとは思うのですが、以下、一応解説しておきます。
「シャトー」といえば、誰もがボルドーワインを思い浮かべ、なんとなく権威あるイメージを抱いているかと思いますが、「シャトー・ゴンフラーブル」とは、空気を入れてふくらませる、お城の形をした子供用の遊具です(例えばこんなの)。
そして「グラン・キュ・グラッセ」というナンセンスな一文入り。これは、ボルドー地方でシャトーの格付けを意味する「グラン・クリュ・クラッセ」を文字っていて、強いて訳せば「凍った偉大なるQ」とか…。っていうか、「キュ」を同じ発音の「cul」(お尻の意味)にしないだけでも良かった…。(でも音読みしたらフランス人にとってはやっぱり「冷たい大きなお尻」だろうなあ。)
瓶の形もボルドー風で、完全にボルドーワインをからかっている様子。揶揄の対象となっているのは、ボルドーワインそのものか、ボルドーワインばかり求める消費者か、ボルドーワイン的な味に画一化されるワイン界か…きっとボルドーワインに象徴されるそういったものすべてなのだと思いますが。
って、いやいや、もしかしたら、そんな深い意味はなく、ただ遊び心でつくったのかもしれません。

さてしかし、中身もボルドー風だったらどうしよう?(ボルドーは好きではないので)とちょっぴり不安を抱きつつ抜栓。
香りをとってみようとグラスに近づいてみたら…うわっ、これアルコール強いでしょ!?って、ラベルを確認してみると、なんと15度!(ワインは、だいたいにおいて11.5度から13.5度が普通です。)ちょっとおいてみた方が良いかな?ということで、いったん栓をし、アペリティフをとって、約2時間後にもう一度あけてみました。今度はだいぶ開いた感じで飲みやすい。
たしかにいちごジャム系の果実味は濃く、タンニンもしっかりあるはずなのですが、アルコールがまるみを出しているせいか渋くなく、酸味も控えめながら、どこかすっと入ってくるような軽さもあります。個人的には普段あまり重めのワインは飲まないのですが、好みでないタイプながらも、これは美味しく感じました。
夫いわく「イタリアワインみたい」。私はイタリアワインにはてんで疎く(白状しますと、ワイン学校でのイタリアワインの講義の間、隠れて別のテスト勉強していて聞いていなかった…)、イタリアのどの辺のワインのことかはよくわかりませんが、なんとなくイメージとして同感。今回、アペリティフでだいぶお腹がいっぱいになってしまったので、結局夕食はナスとパプリカのトマトソースをつけたパンとブレザオラをつまんで済ませたのですが、イタリアっぽいこの取り合わせがワインになかなか合いました。トマトソースの酸味をワインの甘みが包んでくれて、私としては目からウロコのマリアージュでした。

ちなみにブドウ品種はサンソー、マルスラン、カラドックだそうですが、後者二品種は聞いたことがありませんでした。調べてみたら、マルスランはカヴェルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュ・ノワールの交配種、カラドックはグルナッシュ・ノワールとコ(=マルベック)の交配種だそうです。どちらも、タンニンが多いのに苦みがなく柔らか、フルーティで色が濃いワインとなるのが特徴らしい。なるほど〜、たしかにそういうワインでした、これは。
ヴィンテージは明記されていませんが、多分2011年です。
牛肉のトマト煮込みとか、メルゲーズのクスクスなんかに合いそうです。